低酸素血症は動脈血中の酸素が正常より低い状態にあることをいいます。

臨床的には動脈血酸素分圧(PaO2)が60mmHg未満または経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)が90%未満で低酸素血症と考えることが多いですが、実際には低酸素血症は明確に数値で定義されていません。

酸素を運搬するヘモグロビン(Hb)は酸素と結合していない時には赤色を吸収し、酸素と結合している時には赤色をあまり吸収しない性質を利用して、血液中のHb内にどれだけ酸素を含んでいるかを表したのがSpO2です。

SpO2はパルスオキシメーターという器械で測定しますが、指にクリップを挟むだけで簡単に測定できる利点がありますが、指先の血流や温度などによって誤差が生じる可能性があります。

低酸素血症はPaO2で判断した方が望ましいですが動脈血を採取する必要があり、手術中や重症患者では常に動脈圧を測定するために動脈に針を留置しているので、いつでも動脈血を採取できPaO2も測定できますが、動脈に針を留置していないと、その度に動脈に針を刺して採血する必要があり、手技的にもやや難しいため現場ではSpO2で代用しているのが現状です。

マスクをしてもSpO2が下がらないという論文がありマスクをしても低酸素にならないと主張する人が居ますが、SpO2は誤差がある可能性があるためSpO2だけで判断するのは危険で、実際に中国でマスクを着用して運動して亡くなった方が居たようにマスクは低酸素になるリスクはあると考えられます。

譲歩して運動中でなければそれほど多くの酸素が必要ではないためにSpO2が低下しないかもしれませんが、実際に症状を認める人が居るため因果関係があると考えるべきだと思います。

マスクをすることで二酸化炭素が貯留することも考えられ、マスクによる症状は二酸化炭素貯留による症状の可能性も考えられます。

二酸化炭素も一般的に血液中の分圧で評価しますが、動脈血も静脈血もそれほど差が無いので静脈から採血して測定しても構いませんが、いずれにせよ患者さんに針を刺すという苦痛を与え、連続的に測定できません。

連続的に測定するにはやや誤差はありますが呼気中の二酸化炭素濃度を測る方法がありますが、その器械は大型でパルスオキシメーターほどは普及しておらず、測れる施設は限られているので一般にはパルスオキシメーターが最も簡便に呼吸状態の評価ができる器械になります。

患者さんが方程式を解くように何でもデータ通りであれば苦労はありませんが、データは問題なくても異常を認める事はよくある話で、データだけで判断するのは問題があり、マスクを着用してもSpO2が下がらないために問題ないと判断するのは非常に危険だと思います。

しかし実際にはデータばかりを見て実際の患者さんの状態を診て判断する医師は少なく、そういう医師達が今の混乱を拡げているとも言えます。